魚津市を拠点に、広告やCM、冊子、イベントなどのヘアメイクを担当している高森まみこさん。
東京でヘアメイクを学び帰省後、ブライダルを中心にさまざまな事務所で経験を積まれてきました。
子ども2人の母になった現在でも、富山のみならず、北陸から全国へと活躍の場を広げています。
そんな高森さんの仕事に対する想いや、子育てで大切にしていることなどを取材してきました。
原点はぬりえ遊び
———–ヘアメイクアーティストって、華やかでカッコよくて、女性にとって憧れの職業ですよね。高森さんが、ヘアメイクアーティストを志したのはいつ頃ですか?
高森さん(以下、高森):私、幼かった頃、色鉛筆や絵の具が大好きだったんです。
よくある12色の色鉛筆じゃ満足できなくて。100色色鉛筆を眺めながら、「この色とこの色は何が違うんだろう?」とか「この色を組み合わせたらどうなるだろう?」って考えるのが好きで。
今考えると、それが原点だったのかもしれません。
———–色遊びが好きなお子さんだったんですね。
高森:塗り絵で色塗りをするときも、髪の毛の色にハイライトを入れてみたり・・・(笑)
それがすごく楽しかった記憶があります。
だから、あまり道も迷わず美容学校に行きましたね。たぶん、ずっと小さな頃から無意識に憧れていたんだと思います。東京の美容学校に入学した当初は、美容師になるつもりでいました。
っていうのも、美容系=美容師というシンプルなイメージしかなくて。
でも、いざ学校に通ったら、ファッションショーや舞台メイク、アートメイク、ネイル・・・さまざまな分野を学んだり経験させてもらえて。
美容の中でも私はメイクが一番好きなんだなと、気持ちが固まっていったという感じです。
———–さまざまな美容系の分野を学べる学校だったんですね。今まで知らなかった世界を経験できたことで、自分の一番好きな道を見つけることができたんですね。
勢いで飛び込んだのは
———–卒業後、富山に戻ってきてから、ブライダル系の事務所にてヘアメイクをしながらキャリアを積んでこられたとのことですが、2007年に独立されたきっかけはなんだったんですか?
高森:その頃に勤めていた会社は富山市だったんですが、ちょうど結婚するタイミングで黒部市に移住することになり、移動距離を考えると難しいかなって。
仕事を減らしながら工夫していましたが、そのことで立ち会えない仕事も出てきてしまって・・・。
それで、結婚を機に退職しました。
ただ、仕事を全て辞めるのは嫌だったので、移住した先でも知り合いのヘアメイクをしたり、友達のウエディングのメイクをしたりするなどしてました。
そのうち徐々に仕事も増えて、気付いたらフリーになっていった、という感じなんです。
———–そうなんですね。仕事しているうちに、独立のカタチが出来上がっていったんですね。独立したときは、どんな風に仕事を増やしていかれたんですか?
高森:個人的な知り合いの方々との仕事もあったんですが、それだけじゃ寂しいかなって思ってたときに、たまたま雑誌で呉服のレンタルショップの記事を見つけて。
「こんな場所でメイクができたらいいな」って直観的に感じました。
そのあと、その店を街で偶然見かけて・・・「すみませーん!私へアメイクしている者なんですが。」と勢いで飛び込んでいったんです(笑)
———–え~すごい!!いきなり飛び込み営業なんて、度胸ありますね。
高森:今思えば、若さゆえに無知だったと思いますね(笑)
今だったら怖くて絶対できないです!(笑)
考えずに行動しちゃうタイプなんです。とりあえずやってみようって。
でも、その呉服レンタルショップさんとは、そのことがきっかけで今でも一緒に仕事させて頂き、よい関係を築けました。
子育てと仕事の葛藤
———–独立後、やはり大変なこともありましたか?
高森:一人目の子どもができたときに、入院してしまって・・・。
その経験もあり、二人目を授かったときも仕事を広げて先の先まで予定を入れると迷惑がかかってしまうかもしれないって思いました。
だから、二人目を産むまでは仕事をセーブしつつ、産んだら自分のやりたいことに打ち込む、そう決めてました。
でもやっぱり、独身でずっとキャリアを積んできた人より、ずっと劣等感があるというか。
子どもがいることは本当に幸せで有難いんですけど、もし子どもがいなかったらもっと仕事を広げることができたんじゃないかっていう葛藤もあって。
今でも大きな仕事の話が来たときは、家族と相談しなきゃいけないし、預け先も考えなきゃいけないので、断っている仕事もたくさんあって。
———–それ、すごく分かります。子どもがいることは幸せですが、もし独り身だったら少し違っていたのかな、とか私もよく考えてしまいますね。
高森:子どもも欲しかったし、でも仕事もしたい。欲張りなんですけどね(笑)
子どもはすぐ大きくなるし、今は子育てに集中して、仕事は子育てが終わってからでも遅くないんじゃない?と、周りからはよく言われました。
けれど、今できることと10年後できることは違うし、今やることで10年後できることもあるだろうし、どうしても自分の中で納得ができなくて。
やりたい気持ちを我慢しながら子育てしても子ども達にも悪いし、それだったら楽しんでいるお母さんの姿を見せた方がいいかなって吹っ切れた部分があって。
最近では、「じゃあ仕事行ってくるね!」と楽しんで出かける姿を見せてます。
ヘアメイクの仕事は、子ども達には何をしているか分からない裏方の仕事なので、「このCM、ママがヘアメイクしたんだよ」とか「すごく大変だったんだよ~」って、知ってもらえるよう積極的に話するようにしてますね。
———–そうですよね。お子さん達も、イキイキと楽しそうなママを見るほうが嬉しいですよね。身近で目にするCMや広告を手掛けるママは、お子さんにとって自慢のママですね!
高森:上の子どもには特に負担もかけてきたので、自慢させてあげられるものがあればいいかなと思いますね。仕事で帰りが夜遅くになってしまったり、運動会やお遊戯会に参加できなかったりすることも多かったので。
最近は、何日か家にいると「ママ仕事している方がニコニコして楽しそうだから、仕事行ってきていいよ」って言われます(笑)
ヘアメイクは背中を押すスイッチ
———–ヘアメイクの仕事をしていて、やりがいや一番楽しいことはなんですか?
高森:広告で言うと、私は作品をつくる中の一部であって、私がつくったものをカメラマンがどう色付けするか、最終的にディレクターがどう編集するかに委ねることになるんです。
だから出来上がった作品が、自分の思い通りになることもあれば、違ったと感じることもあって。
タッグと組むカメラマンやディレクターに、どんな風にしたら想いが伝わるかというのを毎回考えるのが楽しいですね。
例えば、光の入れ方や影の出し方などカメラマンによって違うので、「この撮り方だったら、メイクはこう変える」とか、自分なりに攻略するのがワクワクします(笑)
———–広告や雑誌の出来上がった作品を見る瞬間は、やっぱり嬉しいですか?
高森:すごく嬉しい反面、撮影が終わったら私の中では毎回反省会になっちゃうんですよ。
「良かったな、可愛かったな」では終わらないんです。
やっぱり、もっと目指したい理想があるので。まだまだと思っているからこそ反省点も出てくるのかもしれません。
———–さすがですね。現状に満足せず、常に上を目指しているんですね。
仕事のスキルを高めていくために、日々勉強や努力もされているんでしょうか?
高森:興味のあるものに関しては、話を聞いたり調べたり、常に知識の引き出しを増やすようにしていますね。
自分に人体実験するつもりで、いろんな化粧品を試したりもしてます。
その方がアドバイスもできますし、自分が経験した上で言うアドバイスの方が重みもあると思うので。「私がこうしたら、こう変わったよ」って。
だから早く30代になりたかったですね(笑)
シミとかシワとかが出てくる30代になった方が、自分で分析もできますし。
実際に自分自身、30代になった方がメイクも上手くなったと思いますね。
———–自分の悩みも、仕事の上達に繋がったんですね。お客さんの立場からしても、同じ悩みやコンプレックスを理解してくれているヘアメイクさんの方が頼りになる気がします。
仕事をしていて、印象に残っていることはありますか?
高森:福祉施設の撮影で、障害のある方やその方々をサポートしている方のメイクをさせて頂いたときに、目をキラキラさせて喜んでくださったことですね。
翌日から意識が変わること、外見への意識が変わると心も整うこと、張り合いが出ること、それらが直球に伝わってきて、私まで嬉しくなる撮影でした。
———–ちょっとメイクしたり、髪をセットするだけで元気になれる、ヘアメイクのチカラって大きいですね。
高森:改めて感じたのが、ヘアメイクってスイッチを入れる手段なんだなって。
綺麗になるのが最終目的じゃなくて、その人に自信を与えたり、演劇ならその役になりきるためのスイッチだったり。
綺麗にするだけが私の職業じゃなくて、どんな風になりたいかによってその人にスイッチをいれてあげられる職業でありたいなと思います。
子どもを産んでも私の人生
———–現在、お子さん二人のママとしての一面もありますが、家庭と仕事の両立で大切にしていることはありますか?
高森:これから女性がどんどん社会に出ていく時代になっていく中で、子どもを産んだら仕事に出れないみたいなイメージを子ども達に思わせるのは嫌だなって思って。仕事に行くことが悪いみたいな。
だから、仕事に行くときは楽しんで行く、休みの日は子どもに全力でいる、ということを大切にしています。
「仕事はしたい、でも子どもも育てたい、両方ほしい!」
今後そんな風に思える人達が目指せる存在になろうと思って。
もっと女性が自由に生きれるようになってほしいなと思いますね。
———–高森さんのような存在がいることで、悩んでいる女性達も「仕事してもいいんだ」って、ちょっと心が軽くなれそうですね。
高森:なんか不良みたいな感じですよね。枠から外れて「いいじゃん!」みたいな(笑)
私自身も両親が共働きだったこともあって、家にいなかったら子どもは不良になるかって言ったらそうじゃないし、環境を子どもなりに理解して育つと思っています。
専業主婦の子どもが必ず良い子になるとは限らないし、保証もないですもんね。
だったら、自分の好きなように生きさせてもらおうと。
子どもを産んだら子どものために生きる人生ではなく、子どもを産んだら子どもに生き様を見せるつもりで自分の人生を歩んでいきたい。
もっと世界を身近に
———–これからの夢はありますか?
高森:拠点は富山でもいいんですが、ゆくゆくは海外でも仕事できたらいいなと思ってて。
夏休み期間中にハワイに行って、子ども達はサマースクールに通ってる最中に私は仕事をする、みたいな。それを何年か繰り返して子ども達が慣れてきたら、アメリカ本土に自分のしたい仕事を見つけに行く、みたいな夢を考えてます。
———–すごく具体的に考えているんですね!海外進出したら、仕事の幅もぐっと広まりそうですね。
高森:ヘアメイクさん誰でもいいってわけじゃなくて、私だから仕事を依頼したいって言ってもらえるようになりたいです。
日本で一生を終わらせなくても、もっと身軽に海外へ仕事しに行けるのが理想ですね。ちょっと東京へ行く感覚で、ニューヨークに行くみたいな(笑)
———–高森さんは、とてもフットワークが軽いんですね!
高森:いろんなものに興味があり過ぎるのかも(笑)知らない世界をもっと知りたいんです。
ヘアメイク業界でも、白人も黒人もいるアメリカと日本とでは全く違いますし、せっかくヘアメイクの世界にいるのに経験できないのは勿体ないなって。
———–これから、やりたい夢がたくさんありますね。高森さん自身、好奇心旺盛だからこそやりたいことも増えていくのかもしれませんね。それに、やりたいと思うことを実現させていく力もすごいなと感じます。
これから、やりたいことをスタートさせる女性に向けてアドバイスをいただけますか?
高森:やりたいことをスタートするタイミングに、遅いとかはなくて。
どの道を選んでも失敗ではないし、間違いでもない。
この道を選んでよかった、と胸を張って生きられる選択をしてほしいです。
———–どんな道を選んでも、それは間違いじゃない。その言葉に、私自身もとても勇気をもらいました。
子育ても仕事も全力で楽しんでいるからこそ、取材中もイキイキとした笑顔でお話してくださった高森さん。これから、どんどん活動の幅を広げて活躍されていくことを楽しみにしています。
本日はありがとうございました。
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