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【地域おこし協力隊インタビュー/穴水町】「楽しくないと意味がない」。好きなことを仕事に/後藤洋子さん

「楽しくないと意味がない」。

趣味のカヤックフィッシングやサップヨガを通して出会った穴水町の海に魅せられ、移住を決意した後藤さん。

能登の海の魅力を伝えたいと、サップヨガ教室の開業に向けて奮闘中です。

コロナ以前は、金沢市で23年間ジャズピアニストとして活躍し、現在はピアニストと穴水町地域おこし協力隊の二足の草鞋を履く、後藤さんの素顔に迫ります。

 

 

後藤 洋子(ごとう ようこ)さん プロフィール

1974年岐阜県各務原市生まれ。大学時代を金沢市で過ごし、1997年から金沢市でジャズピアニストとして活動を始める。
ホテル日航金沢のレギュラーピアニストを務めるほか、金沢ジャズストリートやモントレージャズフェスティバルin能登など、地元イベントにも多数出演。
2020年にコロナ拡大のため、ピアニストとしての活動を一時休止。2020年10月からは穴水町地域おこし協力隊に就任し、県外からの移住定住を支援する。

 

地域おこし協力隊でピアニスト、二足のわらじ


ー穴水町に来てから、どんな生活を送っていますか。

 

後藤さん:毎週金曜、午後5時15分に仕事を終えると、その足で金沢へ向かい、午後9時から始まるライブに出演します。平日は地域おこし協力隊として、週末はジャズピアニストとして、慌ただしい日々を送っていますね。

 

後藤さんが出演するライブ。

 

好きなことを仕事にしたい


ーピアニストと地域おこし協力隊の両立って、かなりギャップがありますよね。なぜピアニストから穴水町の地域おこし協力隊になろうと思ったのですか。

 

後藤さん:2020年頃からコロナの影響で、飲食店が一斉に休業に追い込まれました。その影響をもろに受けて、ピアニストとしての仕事がゼロになってしまいました。

最初の頃は「わーい、休みだ!」と思って、気が済むまで趣味だったカヤックフィッシングに明け暮れる日々を送っていました(笑)。石川県は能登から加賀まで、福井県へも足を伸ばしたりしていましたが、中でも穴水町の海がお気に入りで、時間をつくってはよく訪れていましたね。

 

後藤さんお気に入りの穴水町の海。

 

ー人生を謳歌されてますね!ところで、カヤックフィッシングって何ですか?

 

後藤さん:カヤックと呼ばれる小船に乗って沖の方まで出て釣りを楽しむことです。北陸だとまだまだマイナーなアクティビティなんですよね。
カヤックと釣り竿を小脇に抱えて、浜辺を歩いていると、「それなんけ?それなんなん?」と、見ず知らずの人たちから声を掛けられたり、写真を撮られたり。気づいたときには、人だかりができているなんてこともありました。

 

ーそんな出会いがあったとは!

 

後藤さん:カヤックフィッシングに興味を持ってくれている人たちがこんなに大勢いるんだ、って驚きましたね。それならいっそのこと、この穴水町の海でカヤックフィッシングを体験できる教室を開こうと思いました。独り身だし、自分が食べていけるだけの生活の足しになればいいかなあって。

 

ーすごい決断力!その後は?

 

後藤さん:開業の相談をしようと役場を訪れた際に、地域おこし協力隊のことを教えてもらいました。それで、協力隊として活動しながら、開業の準備を進めていくことに決まりました。

 

「まずやってみる」。自分の心に従って


ー新しい挑戦を前に、多少はためらったり、不安になったりしなかったですか。

 

後藤さん:「まずはやってみる」。何か新しいことを始めるときに、成功するイメージとか、嬉しい楽しい気持ちが先行してしまって。あまり深く考えないのが私の悪い癖でもあるんですけどね(笑)。

 

ーポジティブ!羨ましすぎます…。

 

後藤さんのライブ仲間たち。

 

後藤さん:ピアニストを生業に選んだのも、ピアノが好きだからで。好きだからこそ続けてこられたんだと思います。そんなピアノに変わる仕事をするなら、「自分が楽しいと思えることを仕事にしたい」と思って。

 

「宗教信者と勘違い!?」試行錯誤する日々


ー地域おこし協力隊として、穴水町に県外からの移住者を呼び込もうと、試行錯誤する日々だと思います。活動する中で印象に残ったできごとはありますか。

 

後藤さん:空き家の見学案内をしていたとき、近くの住民が近づいてきて突然「あんたら〇〇じゃないやろね!」と、とある宗教団体と間違われたことがありましたね。

 

ーえ!!大丈夫でしたか!?

 

後藤さん:昔この地域に、とある宗教団体の信者たちがいたみたいで。さすがにびっくりしましたね…。小さな町なので、見ず知らずの人が入ってくることに対して、抵抗を感じる地元の方も少なからずいたりするので。

 

ーそれだけ地域のつながりが強いということなんですね。

 

後藤さんが勤務する穴水町移住定住促進協議会。

 

後藤さん:穴水町では、老年人口の増加により、医療や介護に必要な社会保障費が増加し、財政の圧迫が予測されています。さらに、生産年齢人口の減少により、医療や福祉分野に携わる人材を確保することも困難となり、医療や福祉サービス水準の低下も懸念されているんです。
少子高齢化は良くないことだと分かってはいても、実際のところ地域の人たちにとってはまだまだ他人事な雰囲気なんです…。

 

ーなるほど。

 

後藤さん:この問題を解決するためには、地域の人たちの意識改革が必要だと感じています。その第一歩として、まず町の現状を正確に知ってもらうことから取り組んでいきたいです。

 

ー町全体で、移住者を歓迎するような一体感が生まれるといいですね。

 

コロナ渦での開催。「駅ピアノ」で繋がった日


ー地域おこし協力隊として大変なことも多いと思いますが、ぜひ嬉しかった瞬間を教えてください。

 

後藤さん:着任後、ピアノで地域を活気づけようと、のと鉄道穴水駅の待合室に「駅ピアノ」が設置されました。2020年、2021年には、この駅ピアノを活用して、クリスマス演奏会を開きました。

 

駅ピアノを活用したクリスマス演奏会。

 

ー楽しそう!みなさんの反応はどうでしたか?

 

後藤さん:目をぎょろっとさせたり、きらきらさせたりしながら、食い入るように聴き入る姿が新鮮でしたね。
金沢だとライブ慣れしているお客さんが多くて、リズムに合わせて静かに体を揺らしたり、演奏後に拍手をしてくれたりと、ごく一般的な反応でした。それが当たり前だと思っていたので、穴水町の人たちの反応を見て、なんてピュアな人たちなんだろうと感激しました!ぐっと心の距離が縮まった気がしましたね。

 

ーそれは、ピアニスト冥利に尽きますね。

 

自分に優しく、人に優しく


ー穴水町に移住してきて一年余り。後藤さん自身に何か変化はありましたか。

 

後藤さん:金沢にいたころの友人には、雰囲気がかなり変わった、柔らかくなったね、と言われるようになりました。

 

ーそれは自分でもびっくりですね。

 

後藤さん:朝起きて窓を開けたときに感じる風が新鮮だったり、渋滞の心配がなかったりと、一つ一つは些細なことだけど、穴水町に来て知らず知らずのうちにストレスが取り除かれたおかげだと思いますね。

 

穴水町の冬。

 

ー住む場所で、そこまで変わるものなんですね。

 

後藤さん:体や心が健康になってくると、人に優しくできたり、素直に感謝できたり。これまで以上に円滑にコミュニケーションが取れるようになった気がしています。
暮らしと気持ちにゆとりが出てきて、朝を楽しむようにもなりました。早起きして、ヨガやサップで一汗流してから仕事に向かってみたり。

 

ー朝活ですね、憧れます!

 

食で感じる自然の恵み


ーずばり後藤さんだから知る穴水町の魅力を教えてください。

 

後藤さん:穴水町に来て、だんだんと友人や顔見知りも増えてきました。仲良くなったご近所さんが、天然のきのこや山菜、ジビエ肉など、季節ごとに地元で採れた産物をいつもお裾分けしてくれています。一緒に採集に行ったり、鍋に誘ってくれたりなんかもして、まるで家族みたいで嬉しかったですね。

 

ご近所さんがお裾分けしてくれたサザエ。

 

ーほっこりしますね。やっぱりこれまで食べていたものとは違いますか。

 

後藤さん:全然違いますね。口当たりや風味、何から何まで。食を通じて、豊かな自然の恩恵を日常的に受けられるのは、穴水町にいるからこその贅沢ですよ。

 

「穴水の海にファンを」この先も地域とともに


ー多岐にわたって活動されている後藤さんですが、これからの目標を教えてください。

 

後藤さん:当初は任期満了後、カヤックフィッシングの教室を予定していました。でも釣りというと、男性向けのマニアックなイメージ。女性や子どもたちにとって、カヤックフィッシングはなかなかチャレンジしにくいかと思って。

 

ーなるほど。

 

それで、子どもも女性も、もっとたくさんの人が気軽に楽しめるようにと、サップヨガの教室を企画することにしました。そのために、ヨガやサップ、サップヨガのインストラクター資格に加えて、救急救命に関する資格も取得しました。

 

サップヨガ教室を楽しむ参加者たち。

 

ーサップヨガとは何ですか?初めて聞きました。

 

後藤さん:ボードの上でバランスを保ちながら、ゆったりとヨガを楽しむことです。開放的な海の上で、心も体もリフレッシュできますよ。

 

ーやってみたいです!でも難しそう…。

 

後藤さん:昨年の夏に、サップヨガのイベントを開催しました。もちろん全員初心者です。みなさん「わー!きゃー!楽しい!」と大はしゃぎ(笑)。落ちたって泳げばいいんです、大丈夫大丈夫!

 

 

ーそうですね!心強いです。

 

後藤さん:それと実は、任期終了後も引き続き、穴水町で移住のお手伝いができればとも考えていて、キャリアコンサルタントの資格取得に向けて勉強中なんです。今年の7月に試験を控えていて合格できたらいいなあと。

 

ー自主的にプライベートでですか?

 

後藤さん:言われてではなく、これまで活動してきて、住まいがあっても、お仕事も提案できなければ、本当の意味での移住支援とは言えないなと思って。勝手に私がやりたいだけなんですけどね。やってみないと気が済まない正確なので(笑)。

 

ー後藤さんの真っ直ぐな人柄と、この町への愛着の深さがとても伝わってきました。今後のご活躍を楽しみにしています。

 

穴水町移住定住促進協議会

《住所》石川県鳳珠郡穴水町字川島ラの174番地
《TEL》0768-52-0272
《公式サイト》住まんかいね。穴水
《Facebook》穴水町移住定住促進協議会