新築をこれから考える方に、ぜひ読んでいただきたい「お役立ち情報」として「家の耐震性」をわかりやすく解説していきます。
今回は震災で被害があった富山県にお邪魔して、耐震性で「必ずチェックしてほしいポイント3つ」をお伝えしていきます。
特に、“ 北陸ならでは ” のチェックポイントも必見です。
今回、取材のご協力をいただいたのは、株式会社OSCARホールディングス・オスカーホームの設計統括・三井さんです。
三井さんとの対談を通じて、プロが見る耐震性の要点などをいっしょにみていきましょう。
《自己紹介》
住宅会社専門 コンサルタント
ハウスメーカーや住宅設備機器メーカーの職歴を持つ、戸建住宅のスペシャリスト
所属:設計開発グループ・統括 一級建築士(勤続年数20年)
今回の震災は元旦から大変でしたね。
お客様の家で被害などは大丈夫でしたか?
不幸中の幸いとして、人災はなく家屋の倒壊も0でした。
ただ、液状化に伴い建物の傾斜があった方はいらっしゃるため、引き続き補修のフォローをさせて頂いているところです。
お客様からも、大きな地震でも安心だった、というコメントをいただけました。
今回は、耐震性の重要性を思い知らされましたね。
読みたい場所にジャンプ
耐震等級3が標準になっているかどうか
【チェックポイント①】耐震等級3はマスト!
オスカーホームさんは、標準的に耐震等級3を取得されていらっしゃるんですか?
そうですね、全棟で耐震等級3を取得しています。
(なるほど、オスカーホームさんは第一ステップはまずクリア…ふむふむ)
住宅の耐震性は、3段階のランク付けがされます。
耐震等級は数字が高いほど地震に強い家、となりますが、等級3がもっとも耐震性が高い家となります。
等級3では、建築基準法で決まっている耐力の1.5倍以上の性能がある家、という指標です。
建築基準法=安全な家、とは限らない
等級3の話で言えば、その基準になっている建築基準法自体がちょっと不安ですよね。
そうですね、そこは法律の「落とし穴」ですよね。
建築基準法では、「数百年の1回の、震度6強~7クラスの地震で倒壊しないこと」「数十年に1回の震度6弱の地震で損傷しないこと」が基準です。
ただ、倒壊の目安になっている震度7~震度6強の地震、この15年で日本で何回あったか知っていますか?
実は14回も発生しており、1~2年に1度の頻度で発生しています(2011年~2024年4月)
意外と、よく起きている震度6強以上の地震。
この地震で倒壊しないような設計、言い換えれば「震度6強以上で損傷しても建築基準法違反ではない」という点は、
住宅の耐震性で見落としてはいけないポイントです。
建築基準法を守っている=安心、とは限らないんです。
(むむ…、法律の落とし穴もしっかり理解されている…詳しい設計の方だな…斬れるポイントがないじゃないか…)
計算方法も構造計算か否か?チェックしよう
【チェックポイント②】耐震等級3の計算方法は、許容応力度計算による構造計算かどうかチェック
ちなみに、その耐震等級は構造計算で設計したものですか?
はい。 もちろん当社の建物は全棟で、許容応力度計算などの構造計算による耐震等級3になっています。
全棟で!?建売もですか?
はい、そうですね。
(ここまでちゃんと設計されていると、もはや斬るポイントがない・・・)
家の耐震性を測る計算方法は、大きく分けて3種類あります。
1つ目は、仕様規定と呼ばれる壁量計算などの簡易な計算方法です。
業界では、もっとも主流の計算方法として使われています。
A4数枚の計算で完了してしまう計算で、大地震の結果を踏まえて順次廃止していく方向で検討されています。
また、この壁量計算で単純に壁を1.5倍に増やしても、本当の耐震等級3とは言えません。
2つ目は、住宅性能表示制度を利用した計算方法(品確法)です。
長期優良認定住宅など、認定をとるためには、品確法以上の計算が必要になります。
3つ目の一番詳しい計算方法が、「許容応力度計算による構造計算」です。
数百枚にもなる計算を行い、地震で倒壊はもとより損傷しないよう詳しい計算を行います。
構造計算を行った書類は、こんな感じで「すごい分厚い書類」になって出てきます。
耐震等級3だからと言って、この構造計算をすべてやっているわけではない点にも注目です。
2つ目の品確法と呼ばれる法律に則った計算方法であれば、耐震等級が取得でき、等級3と言えるようになります。
しかし、構造計算に比べて簡易的な計算になっている部分が多く、家族の命を守るという意味においては不十分と言えます。
さらに、今回の地震で被害の大きかった液状化など、建物本体ではない基礎や地盤のチェックは、構造計算でしかできません。
富山では特に液状化の被害も多かったので、地盤の状況も適切に把握することも大事です。
現在、耐震においてできる対策としては100点満点ですね。
工務店の中には、壁量計算や品確法の計算を構造計算と思い込んでいる会社もあるので、ちゃんと「許容応力度計算」という単語を覚えておきましょう。
当社では制振ダンパーも標準仕様として導入していることで、小さい地震から大きな地震まで、家に掛かるダメージを減らしています。
制振ダンパー、大事ですよね。
小さい地震でも家はダメージを受けるので、建ってからエネルギーを吸収してくれる制振ダンパーは
新築の性能を長く保つためにも、標準仕様にされている点はすばらしいですね。
北陸ならでの注意点とは
ちなみに、当社が構造計算をしっかりしている理由はもう1つあるのですが、それは分かりますか?
なんだろう・・・?ちょっとわかりませんね・・・
別所さんは愛知県在住とのことですが、太平洋側と大きく異なり北陸は豪雪地帯なんですよね。
今回の震災も元旦という真冬でしたが、近年では珍しくたまたま積雪が少ないタイミングでした。
そのため、逃げる際もそこまで雪があしかせになることもなく、避難がスムーズにできたことと同時に、
積雪量が少なかったことで、建物への被害も最小限になったと言われています。
そうなんですね、多いときは屋根の上にどれくらいの積雪があるんですか?
最近は年ごとに結構違いますが、多い時は屋根の上に1m以上の積雪があります。
1m!! 家にかかる重量もすごいことになりますね。
そうなんです、建物が雪というおもりを載せているときに、大きな地震がくるとどうなると思いますか?
家により一層、大きな負担がかかりそうですね。
【チェックポイント③】北陸では、積雪荷重を考慮した設計になっているかどうか?チェック
その通りです。
例えば、一般的な30坪・2階建ての家に1mの雪が積もると、その重さは全部で約15トン。(300kg/㎡)
そんな、雪という「おもり」がのっている状態で地震が来ると、家にかかるダメージは膨れ上がります。
地域によって異なりますが、1.5mの積雪を考慮しなければならないエリアが北陸にはあります。
オスカーホームの構造計算では、このような積雪荷重も考慮した設計になっています。
なるほど、北陸ならではの注意ポイントですね。
むしろ、北陸で構造計算をしていないということは、このような大雪の重さを考慮した設計になっていない、となるので少し怖いですね。
ガレージなど窓や開口が大きい場所は弱点になりやすい
ちなみに、オスカーホームさんのホームページなどを拝見すると、
ガレージハウスが特徴の1つになっていますが、耐震上不利になりませんか?
柱がない大きな空間、車を出し入れするための開口部も含めて構造計算をかけていますので、問題ありません。
北陸では雪対策で、他の地域に比べてインナーガレージの比率が高いですね。
耐震の観点からは不利になるガレージハウスであるからこそ、しっかり構造計算を実施してお客様の家を守っています。
(いじわるな質問)ハウスメーカーとかは、実大実験とかやっている会社もありますが、オスカーホームさんはどうなんでしょう?
ガレージに見立てた実大の家で、積雪1.5mが載っている状態で、阪神淡路大震災の耐震実験をおこなっています。
2台入りインナーガレージプランを想定した家に、1.5m相当の積雪と家具に相当する5.8トンもの鋼材を載せるという非常に厳しい条件で、加震実験を行いました。
その結果、阪神淡路大震災に相当する、震度6〜7規模の加震では、ほとんど損傷はしませんでした。
さらに、震度6相当の大規模余震を想定した加震を3回行いましたが、強度を保ちつづけることができました。
独自のユニークな制度が気になりました
すごいですね。
オスカーホームさんは、買取価格保証という「自社で建てた建物を、いつでもオスカーホームさんが買い取る」というユニークな制度をもっていますが、自分たちで、いつ引き取るか分からないがゆえに「建てっぱなし」という印象がないですね。
ありがとうございます。
当社の不動産住宅は、土地や家の価値を保って、20年間買い取れることを前提に設計・建築しています。
そのため、地震で損傷してしまうような家であれば、この買取価格の裏付けが取れないことになります。
オスカーホームでは、建てた家を新築から20年間、いつでも決まった価格で買い取る制度があります。
家はいざ、なにかの事情で売ろうとしても、簡単に売れるものではありません。
そこでオスカーホームは、新築から20年、毎年決まった額をご提示して、いつでも買い取ります。
転勤・転職、北陸が地元じゃない、将来の選択を家に縛られたくない、など
様々な理由で、北陸に家を建てること自体をためらっている人に、おすすめの制度です。
そうですよね、当然お客様のための耐震性ではありますが、
自社で引き取る際にも、安心かつ高い価値の家を引き取れるわけですね。
買取価格保証の制度を成り立たせることが目的ではありませんが、お客様の命を守るための耐震性が、
結果的にはこのような独自の制度を支える重要な要素の1つにもなっています。
まとめ
ありがとうございます、本日は大変勉強になりました。
北陸で新築をするときには、積雪の重さを考慮した構造計算の大事さを改めて認識しました。
それでは、今回の取材で学んだ点を、もう一度復習しておきましょう。
ここのポイントは、ぜひ保存しておくと、今後の家づくりの参考になります。
・耐震等級3はマストで取得すること
・耐震の計算方法は、「許容応力度計算を含む構造計算」であること
・北陸では積雪を考慮した耐震計算がされていること
以上の3点をすべて、当たり前に満たせる住宅会社を選ぶことをおすすめします。
今回、取材にご協力頂いたオスカーホーム様のホームページや、北陸での販売物件もぜひチェックしてみてください。
本日は取材のご協力ありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。