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【地域おこし協力隊インタビュー/珠洲市】 共に歩み続けたい仲間と挑む、珠洲の未来へ/馬場 千遥さん

能登半島の最先端に位置する石川県珠洲市。人口は本州で最も少ない約14,000人ほど、豊かな自然や伝統文化を残しながら、先進的な取り組みにも挑戦するなど、今注目を集めている市です。今回、珠洲市の地域おこし協力隊として活躍されている馬場 千遥さんを取材。地域おこし協力隊としての活動はもちろん、珠洲市で暮らす魅力についてお話を伺いました。

珠洲市地域おこし協力隊 馬場 千遥さん

奈良県奈良市出身。高校卒業後は金沢大学(石川県金沢市)に進学、地域創造学類にて地域活性化やプランニングについての学びを深める。大学2年生のインターンシップで訪れた長野県木島平村に惚れ込み、卒業後は木島平村の地域おこし協力隊として活動。その後、金沢大学の地域連携推進センターに所属し、地域連携職員を経験。2019年5月、珠洲市地域おこし協力隊に着任。企画財政課移住定住推進係で、珠洲市の移住支援団体「すず里山里海移住フロント」の事務局を担当し、日々活躍の場を広げている。

革新と伝統が融合する地域で

—–本日は、石川県珠洲市の地域おこし協力隊として活躍されている馬場 千遥さんにお話を伺います。珠洲市での地域おこし協力隊は2021年5月で3年目を迎える馬場さんですが、実は長野県でも地域おこし協力隊の経験をお持ちの大ベテラン!とことん地域に根ざす馬場さんの取り組みや想いについて、ぜひ詳しく聞かせてください。まず、珠洲市の地域おこし協力隊に興味を持たれたきっかけについて気になります。金沢大学で地域連携職員として勤務されていた馬場さんと珠洲市の関わりって何だったのでしょうか?

馬場 千遥さん(以下、馬場さん):金沢大学と珠洲市は、もともと深い繋がりがあって、珠洲市に金沢大学「能登学舎」という地域連携の拠点を設けたり、能登の再活性化に取り組む人材育成を目的とした社会人向けプログラムを珠洲市と共同で運営・実施するなど、10年以上前から珠洲市との連携に力を入れているんです。私自身も、大学3年生のときに調査実習で2週間ほど珠洲市に滞在した経験もあります。私としても全く知らない地域でもなかったですし、大学で石川県の地域について学ぶ機会も多かったので、多少なりとも馴染みのある地域ではありましたね。

—–なるほど!金沢大学の拠点が能登にあるというのはなんとなく知っていたのですが、珠洲市との間にそんな深い関わりがあったとは……恥ずかしながら初耳でした。馬場さんは、大学時代から珠洲市に触れる機会が多かったのですね。

馬場さん:それに珠洲市は、地方自治体の中でも先進的な取り組みを行っている地域というか、新しい挑戦を頑張っている地域だなという印象を持っていて。長野で地域おこし協力隊をしているときから、さまざまな事例を参考にさせていただくなど、よく存じておりました。

—–珠洲市のことをよくご存知だったとのことですが、珠洲市の地域おこし協力隊になりたいと思ったのはなぜですか?

馬場さん:大学での地域連携職員の仕事は、やりがいもあり楽しかったですし、さまざまな地域と関わることができたので、それまで小さな自治体でしか働いたことがなかった私にとって学ぶことの多い環境だったと思います。ただ、何か違うなって感じて……。学生を地域へ送り出す側ではなく、私自身が地域で一人のプレーヤーとして頑張ってみたい、そういう気持ちが沸々と湧き上がってきたんです。

—–以前、長野で地域おこし協力隊として活躍されていた頃のように、「現場で」という気持ちが再燃してこられたんですね。

馬場さん:そうですね。ちょうどそのタイミングで、偶然同じ大学の知り合いから、珠洲市で移住担当の募集が出ているらしいと噂を聞いて。即応募しました(笑)私の場合、長野のときも珠洲市のときも、地域おこし協力隊になりたかったのではなく、その地域に関わりたくて、その手段がたまたま地域おこし協力隊だったというだけで。

—–地域に関わりたいという想いが前提にあって、地域おこし協力隊の活動は、そのための手段の一つだったというわけですね。

馬場さん:今年は「奥能登国際芸術祭2020+」も開催される予定ですし、最近では自治体におけるSDGsの取り組みのモデルケースとなる「SDGs未来都市」にも選定されるなど、珠洲市には先進的な事例が多いです。でもその反面、半島の先端とい地理的特性もあって、昔からの伝統文化も色濃く残り続けているんですよね。受け継がれる伝統文化や世界農業遺産を地域の価値として位置づけながら、新しいことにも挑戦する……本当に面白い地域だなとつくづく感じています。

—–確かに、昔から残り続ける自然や文化を大切にしながら、どんどん新しいことにも挑戦していく自治体って珍しいのかなって思います。両極端な一面が、いい意味で融合されているというか。珠洲市って本当にすごい地域なんだなと、改めて気付かされましたね。

日々の経験すべてが仕事の糧に

—–地域おこし協力隊として、普段どのような仕事をされているのか教えて下さい。

馬場さん:まずは、移住相談対応ですね。市役所内にある相談窓口での対面や電話・メールにて、移住を検討されている方からの相談を受けています。最近では、オンライン相談も積極的に導入しています。それから次のステップに進んだ方には、実際に物件の内見や珠洲市のおすすめスポット紹介など現地案内を行っています。現在は、新型コロナウイルス感染対策として、受け入れ地域の制限や1週間前からの検温などを設けながら実施しています。

—–なるほど、移住を検討されている方と地域をつなぐ窓口として活動されているのですね。

馬場さん:あと、活動の中でも比重が高いのが、空き家バンクの管理ですね。登録や利用の受付から物件情報の管理・webサイトの公開、不動産屋さんとの調整、物件の調査や内見対応まで、幅広い業務を行っています。移住相談の中でも、空き家バンクに関する問合せがとても多くて、「この部屋はどんな感じですか?」とか「こんな家を探しているんですけど、ありますか?」など、いろんな内容の問合せがありますね。現在、珠洲市の空き家バンクに登録されている物件は約90件ほどあるんですが、だいたい頭に入っています。何番の物件がどこにあってどんな状態かを答えられる自信がありますよ(笑)

—–え~すごい!では、馬場さんにおすすめの物件を質問すれば、どんどん出てきそうですね!

馬場さん:相談者から「こんな雰囲気の家を探しているんだけど」と言われたら、「あ~、何番の物件が合うかな」という感じで、大抵の物件は説明できるようになりましたね。周りの友人からは、特殊能力やねって言われています(笑)

—–馬場さん、珠洲市の不動産屋さんになれそう(笑)空き家を紹介するためには、必然的に地域全体のことも把握しておかなければならないと思うので、きっと馬場さんはたくさんの珠洲市を知る努力をされてきたのだろうなと。現在に至るまでには、やっぱり大変なこともありましたか?

馬場さん:ありました!着任直後は、まず地名が全然覚えられなくて(笑)「空き家バンクの何番について知りたい」なんて電話がかかってきても、その物件がどこにあるのかも分からなくて、その都度不動産屋さんに電話して聞いて……って感じ。「この物件のまわりってどんな感じですか?」という質問に、珠洲市全体のことはなんとなく知っていても集落ごとの特色までは分からなくて、うまく答えてあげられなかったり。

—–確かに、住み慣れた場所じゃないと地名も分からないですもんね。知識を高めるために、工夫されたことってあるんですか?

馬場さん:工夫というか、日々経験することや聞いて教わることすべてが、移住担当としての糧となるんですよね。ゴミ捨て場や地域行事など日々の暮らしのことから、子育てに関すること、漁業権のことまで、さまざまな相談や質問を受けるので、その都度関係者に聞いて、答えていくうちに、さまざまな知識や人脈がストックされていく感じですね。

—–移住相談を受ければ受けるほど、その分知識や経験が増えるというわけですね。いろんな方がいらっしゃいますし、知っている知見が多いほど、より良い対応に繋がりますね。

馬場さん:そうですね。あとは、地域行事や青年団の集まりなど、できるだけいろんな場所に顔を出すようにしています。年代も地域も、幅広い方々と交流を持つほうが絶対に損はないと思うので。長野での地域おこし協力隊の経験もあったので、そういう地域への溶け込み方は自然と身に付いたかなと思いますね。

コロナ禍で変わる移住へのプロセス

—–コロナ禍になり、今までのようにイベントやセミナーが開催できなくなったかと思いますが、コロナ前と大きく変わったことや新しく始めたことはありますか?

馬場さん:一番の変化は、移住相談件数が昨年度の約2倍に増えたことと、オンラインの活用ですね。オンライン相談は、今年度だけでも35件くらいあったかな。「電話と大差ないのでは?」と思われる方もいると思いますが、オンライン相談は顔を合わせて資料も画面共有しながらお話できる点がとてもやりやすくて。オンラインでも一度顔を合わせておけば、いずれ実際にお会いしたときに「初めまして」感が少なくなるんじゃないかと思います。

—–オンラインでの相談が普及したことは、逆に良かったのかもしれませんね。なかなか現地に来れなくて電話やメールでの相談だった方も、顔を合わせることで安心感が生まれていると思いますし。

馬場さん:そうですよね。あとは大きな移住セミナーやイベントが全て中止になって、東京へ行く機会もめっきり減りましたが、逆にオンラインイベントの開催が増えました。全国規模のセミナーやイベントだと、まだまだ珠洲市は知名度が低いので、興味を持って話を聞きにきてくれる方が少ないんですよね。その一方で、オンライン上だと情報を探している人はたくさんいるので、その情報を求めている人のもとにピンポイントで届けることができれば、対面より効果は高いのではと感じています。

—–珠洲市の情報を知りたい人のもとに、コストをかけずダイレクトに届けることができるのが、オンラインの大きなメリットかもしれませんね。

馬場さん:それに、県がオンラインイベントやセミナーを熱心に実施してくださるので、これまで以上に私たち地域の露出度も高まったんじゃないかなと思います。コロナだからとネガティブに捉えるのではなく、むしろ今がチャンスだと思って活動するようにしていますね。

一緒に未来を描く友達づくり

—–地域おこし協力隊として珠洲市の移住促進を担う中で、一番のやりがいって何でしょうか?

馬場さん:「移住者」を増やすというより、一緒にこれから珠洲市をつくっていく「仲間」や「友達」を増やす感覚なので、友達づくりのような感じで楽しいところです。あと、自分が経験をして見聞きしたものが全て、地域おこし協力隊の仕事に活かしていけるという点もやりがいがあります。この仕事は、生活と仕事が密着しているというか……。それが嫌な人もいると思いますが、私の場合はそれが全く苦じゃなくて。

—–プライベートと仕事が完全に融合しているような感じでしょうか?

馬場さん:そうですね。休日も地域のイベントに参加して、その地域の特徴や雰囲気を肌で体感したことが、移住相談の仕事に活かせることも多いですし、他愛もないコミュニケーションの中で、「今こんな人を募集している」といった求人情報が舞い込んでくることも。

—–なるほど。馬場さんにとっては、プライベートと仕事が融合していることが、逆に心地よいのかもしれませんね。

いつか珠洲市でオーケストラを

—–ちょっと小耳に挟んだのですが、馬場さんは珠洲市で「すずカルテット」という弦楽四重奏団を結成して、イベントなどで演奏活動をされているとか。私も音楽をかじっていたので、とても興味があります。結成のきっかけって何だったのですか?

馬場さん:珠洲市への移住を検討し始めた時、大学の先輩を頼って珠洲市に遊びに来たことがあり、同い年の移住者が運営しているゲストハウスに泊まったんです。そこで出会った一人がビオラを弾けるということを知って。私も趣味でバイオリンをやっていたので、すぐに意気投合しちゃって。他にも、大学のオーケストラサークルの後輩(バイオリン)と先輩(チェロ)が、奥能登で働いていることを知っていたので、「カルテットできるやん!移住するわ!」となった次第です(笑)ある意味、移住の決め手でもあったかもしれませんね(笑)

—–カルテットが移住を決断する後押しになったんですね。それにしても、弦楽器が集まっているなんてすごい偶然!テンション上がりますね(笑)これまで、どんな活動をされてきたのですか?

馬場さん:コロナの影響で昨年はあまり地域イベントでの演奏活動はできませんでしたが、これまで奥能登の音楽仲間と一緒にクリスマスコンサートを開催したり、キリコ祭りの太鼓とコラボしたり、市民吹奏楽団とコラボしてオーケストラ演奏が実現したり……結成から丸2年が経ちますが、着実に活動の場が広がっている感じがしますね。本業以上に楽しく活動させてもらってます(笑)

—–すごい!!さまざまな方々とコラボされているんですね。いつか私も仲間に入れてほしい……(笑)これから「すずカルテット」では、どんな活動をしていきたいですか?

馬場さん:奥能登は、生の楽器(特に弦楽器)やクラシック音楽に触れる機会がまだまだ少ない地域なので、子供たちがもっと音楽に触れる機会を作ってあげられたらいいなと思います。そしていつか、珠洲市でオーケストラが作れたら最高ですね。

地域の「余白」が、新たな可能性に

—–馬場さんから見た、珠洲市の魅力を教えて下さい。

馬場さん:やっぱり色濃く残る伝統文化を大切にしながら、新しい取り組みにチャレンジしていく姿勢がとても好きですね。あと、珠洲市には若い世代の移住者がとても多いということ。移住者の約7割が20~30代なんです。地方移住っていうと、リタイア後にのんびり田舎暮しとか、スローライフというイメージがありますよね。でも珠洲市は、そんな暮らしを楽しむには少し不便なのかなって思っていて。珠洲市は圧倒的に人が少ないので、手つかずの余白が多いんです。「これ足りないな、じゃあ自分がやるか」という感じで、地域の中に余白がたくさんあるのが珠洲市。それに魅力を感じて、何か自分もできるかもしれないと思って移住する若者が多いですね。そんな同世代の若者たちの姿に、私も刺激を受けています。

—–余白の多い地域か……それって、すごく素敵!新しいことに挑戦したり、面白いことを始めたり、いくらでも可能性を生み出せる地域なんですね。

馬場さん:人が少ないので、一人ひとりの役割がとても大きいんです。以前、珠洲市の市長が「珠洲市は、地域貢献と自己実現が同時にできる場所」とおっしゃっていたことがあり、本当にその通りだなと私も共感していて。自分の活動が、地域の活動に影響を与えて、それが目に見えるカタチになるので、やりがいを感じられる地域だと実感しています。

—–自分の活動が地域貢献に繋がることは、自信にも繋がりますね。若い世代が多いと、移住を検討されている子育て世代の方々も安心ですね。

馬場さん:そうですね。私自身も、珠洲市で一緒に歳を重ねていきたい仲間や友人がたくさんできたので、今住んでいてとても安心感があります。ワイワイ楽しく遊ぶこともあれば、「珠洲市のここが足りないよね」と真面目な話で議論することも。「だったら、これをやってみよう」と実際に動き始める……なんてことも多いんです。

—–自分の住む地域の話ができる同世代の仲間がいるって、とても羨ましい!!馬場さんを筆頭に、先に移住をした若い世代が、新しく移住してくる若い世代をしっかり受け入れてあげる体制が整っているからこそ、そういう信頼し合える地域が生まれているんだろうなと感じますね。

これからも、珠洲市に根ざして

—–珠洲市での地域おこし協力隊の任期はあと1年間になりますが、これから挑戦してみたいことや、卒業後にやりたい夢があれば教えて下さい。

馬場さん:移住者と地域のマッチングの精度を上げていくこと、それが目標ですね。空き家バンクの管理にしても、移住希望者がすぐに住める物件をもっとたくさん確保していきたいです。現在の仕事がとても楽しくてやりがいもあるので、できれば卒業後も同じような仕事に就きたいなと考えています。これから更に人と人との繋がりも増えていくと思うので、そのチャンスを逃さないように頑張っていきたいと思います。

—–やはり卒業後も、移住者と地域を繋げる役割を担いたいとお考えなのですね。馬場さんと話をしていると、本当にこの仕事が好きなんだという思いが伝わってくるので、ぜひこれからも頼れる移住マスターのような存在でいてほしいですね。

馬場さん:あとは、珠洲市をめがけて来てくれる移住者の方も多いのですが、やっぱり能登という地域に憧れて来てくれる方も少なくありません。なので、もっと奥能登や能登半島全体で連携を強化していけたらいいなと。たとえ珠洲市で住みたい家が見つからなくても、他の地域で見つかって住んでもらえれば、それはそれで嬉しいですし。地域同士の連携についても、積極的に取り組んでいけたらいいなと思います。

—–能登半島には、たくさんの地域おこし協力隊の方が在籍されていますし、いろんな地域と連携をすることで、また更に新たな刺激にもなりますね。今回取材をさせていただき、珠洲市の地域力の高さにとても驚かされました。古き良き珠洲市の文化を守りながら、若い世代の移住者たちが新しい風を吹き込んでいる。そして一人ひとりが地域住民としての責任と誇りを持ち、珠洲市の未来を真剣に考えている。それが珠洲市の魅力であり、財産でもあると感じました。馬場さんや珠洲市のこれからの挑戦を、私もずっと見届けていきたいなと思いました。本日はありがとうございました。

《珠洲市のおすすめイベント》

本来であれば、昨年開催される予定だった「奥能登国際芸術祭2020」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、1年の延期を余儀なくされ、今年「奥能登国際芸術祭2020+」という名称に変わり、2021年9月に開催が決定いたしました。

奥能登国際芸術祭2020+

《会期》2021年9月4日(土)~10月24日(日) 51日間

《会場》石川県珠洲市全域

《主催》奥能登国際芸術祭実行委員会

珠洲市の豊かな自然や伝統文化、そして暮らしの魅力を再発見することを目的に開催される「奥能登国際芸術祭2020+」。

地域住民やサポーター、民俗学・人類学の専門家、アーティストが協働し、家の蔵に眠っている「地域の宝」を使い手の記憶や思い出とともに集める、芸術祭一大プロジェクト「大蔵ざらえ」は必見!!

詳しくは公式サイトをチェックしてください。

https://oku-noto.jp/ja/index.html